「時つなぎ 後編」









走る、走る。



風のように、転げるように。



足がどんなに疲れようが、肺がいくらはちきれそうになろうが。



そうでもしないと、奪われてしまうから。














<再臨詔 番外編「時つなぎ」――後編――>










そんなにすぐにそう『仲良くなれる』わけなんてない。そうは心で強く思っていた。
今でこそ結構こちらの世界での生活に慣れてきたが、今まで十年間くらいはあの異世界にいたのだ。あの世界では十七歳で 彼氏こそいる女子は少なくないとは思うが、婚約している人はそうそういないという常識なのだ。それに加えて、この政略 結婚。あちらの世界でこの年で婚約している数少ない人だって、お互い好き合ってそういう関係になったのだろう。
・・・自分のように本当に真心から愛せる人物でない人物と結婚する女子などいなかった。
だから、婚礼の儀の夜は嫌で―――だが、アシュヴィンもアシュヴィンで女心を解せないわけではなく、それを悟っている。
周囲の参謀や采女たちやらはお子を、とやかましかったが、それを制して暫くはのんびり構えていていいだろうと猶予を 与えてくれた。

それを意識すると折角待ってくれているアシュヴィンに申し訳なくて、また、緊張してなかなか夜は寝付けず、あの婚礼の 夜からは毎日いつもこうして宮のはずれにある小さな滝の音を聞きに抜け出てきてしまうのだ。
滝から流れ落ちる水音は柔らかく荘厳な音で火照って混乱する脳を落ち着かせてくれる・・・それに、ここの滝は少し あそこにある滝に似ている気がしたから。



そして思い出す。あの辛くも楽しかった戦の中の幸せの思い出を。


でも、何故楽しかったかなんて思い出せば堪えようも無い涙が今夜も頬を伝うから、思い出さない。その一歩手前で止める。


立派な王になれ、と言い聞かせてくれた何よりも厳しく、そして優しいあの言葉を反芻させて。



「・・・・・、・・・と・・・・・さ・・ん」



それでも、何故か今夜はじわりとなにかがこみ上げて止まらない。胸に暗く青い色が押し寄せては引いて、その音頭に
耐え切れなくなって。


久々に・・・今日くらいは、いいよね。
そうひとりごちて足袋をぬぎさり、片足を水面につける。もう片方の足もそっと忍ばせて。
冷たい感覚はあのころと全く変わらないと、また胸を締め付ける。

あの時とは違って今は足元は暗く、覚束ない。でもこうして腰まで浸かって水に身を委ねてしまえば自由だ。
そう、あの時もこうやって水の中に入っていって――――――・・・。





「・・・? ・・・陛下っ・・・!?」


「え――――――・・・」




久々に聞いたその声に振り替えれば、その瞬間同じくこの泉に誰かが入ってきた音がして、沈みかけていた身体を抱きとめられた。


「おっ、忍人・・・葛城将軍・・・!?」

「は・・・っ・・・は・・・」


ここは言わずとも知れた庭園に作られた滝。言わずもがな自然界にあるような底の深い湖などではないというのに、何故 こんなにも慌てることだあるのだろうか。不思議な光景に暫く目を瞬いただったが、ふと我に返る。
また彼に「こんな時間にこんな場所で共も連れずに何をしているんだ」と激怒されてしまうと、肝を冷やした。


だが、


「・・・何を・・・して、いるんだ君は・・・。また・・・・・・」











   『こんなところで、また君を失うことになるかと思った』













そう、珍しく頼りない声で呟かれて。



「そ・・・。
 そんなこと・・・あるわけないじゃないですか。ここ庭園ですよ? ほら、しっかり足も付いてるし、大丈夫ですよ」



不釣合いな弱弱しい言葉に何か頭の奥がじんと熱くなる感覚が襲う。けれどそれはなにか分からなかったから、は 忍人の背を安心させるかのようにぽんぽんと叩いて、おどけてみせる。

そして肩越しに彼の香りを久々に吸い込んで、目を閉じた。こうすれば、王宮は目に見えず、あの思い出がせめて幻で 蘇ってくれるかと思ったから。


ああ、あの時の同じ。白丁花の芳しい香りと、すっかり染み付いてしまった錆びれた香りがする―――。



この幸せなひとときも、あとほんの何秒かで終わってしまうというのに。・・・そう思って、息をゆっくりと吐き出す。



・・・だが、なかなか忍人はその拘束を止めようとはしない。普段の彼なら素早く自分を岸辺に引っ張って行き、小言が 始まるというのに。先ほどの言葉といい、何かが今日は・・・何かが確実に違った。



「そのまま・・・。そのまま、驚かずに聞いてくれ、くれぐれも、静かに」

「・・・は、はい・・・・・・」

「君は―――この世界の伝承を、知っているのか」






びくり。






なにかに驚いたかのように耳元での背が跳ねる。



「いや・・・知っていても、知っていなくとも今はもういい。―――このままだと、この国は俺・・・もしくは君を失い、また再び戦乱の世に変わってしまう」



何故そういう伝承になってしまったかは風早も分からないという。だが、このままだと先の伝承と同じような結末を 迎えてしまう。この先、君がいなくなった豊葦原に一体なんの意味があろう。黒龍が言っていたように、 これ以上人間がまた戦乱に戦乱を生んでいてはこの地上からこの世界自体がなくなってしまうかもしれないというのに。


――――――だから。






歴史を、運命を・・・伝承を、変えよう。






「でも・・・どうすればいいんですか」



そこまで来て忍人はやや言葉に詰まった。何か言いにくいことでもあるのだろうか。



「願いを変えればいい。今までの伝承では君が生きるか、俺が生きるかが願い・・・そう、つまり『互い』が抜けているんだ」

「・・・?」

「伝承の最後に『二人で一緒になにかをした』という歴史は一切ない・・・。それは、こうして・・・身分を気にすることがあったからだろう」


だから――――――。



にしか聞こえないほどの小さな小さな声で、忍人は言った。










『ともに逃げよう』と――――――――――・・・。















***












走る、走る。



風のように、転げるように。



足がどんなに疲れようが、肺がいくらはちきれそうになろうが。



そうでもしないと、奪われてしまうから。









宵闇のなか、容赦なく左右後方から槍や弓、ついには鬼道が逃げる二人に降り注ぐ。地盤を揺るがすような爆撃も受けて、 それでもかつての中つ国の将軍を討ち果たすことは出来なかった。
そう、彼には破魂刀がある。魔の術をその金色の刀身に宿すその二太刀は槍を裂き、弓を粉砕し、爆撃をも爆撃で相殺した。
それに加えて数々の兵法と策略を持っている彼に、浅はかな何人かの軍師の策など到底叶うことは無く―――追撃の指揮を とっていた狭井君はその柔らかな瞳に焦りを滲ませる。



ところが、山中のとある川辺でのことだった。




あれから何刻逃げたかはわからないが、いつの間にか降っていた驟雨のせいで川は増水、氾濫し、人は無論船であろうと 到底渡れそうな状況ではなく―――二人はついに追い詰められてしまった。



「さあ、もう逃げ場はありません。・・・葛城将軍、何故貴方ともいう方がこんな愚かなことを・・・」

「・・・この豊葦原を護る・・・ひいては中つ国を護るためだ」



なにを世迷言を・・・。そう落胆する、かつての部下の手にはしっかりと刀が握られている。彼らが急に弓を放った時の 為に、忍人は何の装備もしていないを後ろに匿い、段々と握力のなくなってきた剣の柄に力を込めた。
そして、迷うことなく切っ先を構える。


「ここでの破魂刀の使用は、川を砕き、さらなる洪水を呼びます・・・将軍とて、ただでは済みませんぞ」

「・・・・・・」

「万事休すにございます。さあ・・・・・・王を、こちらへ」


じり、じりと、頭であろうその兵がにじり寄り、二人との距離を着実に縮めて―――。だが、もっとだ。
もっと彼がこちらに寄ってきて、己の間合いに入った時―――刀を振るい切り倒し、軍勢もろとも奔流へと巻き込んでやろう。
無論こちらも必ず無事というわけではないが、それでもこの絶体絶命の危機を乗り越えるためにはこの方法しかない。


「・・・・・・!」


――――――ようやく兵が間合いに入った。
勢い良く二太刀を水平に薙ぎ、兵の構えた刀と激しくぶつかる。本来ならここで破魂刀は刀など簡単に破砕するものなのだが ―――今は何故かそれが出来ない。もしかしたらこの激戦で疲れがたまっていて、勢いが上手いこと出なかったのかもしれない。
ぎりり、と奥歯をかみ締めて、忍人は剣戟を兵の額にまで押し当てて、そのまま一気に引こうとした。


だが、そうしているうちに後ろの軍も黙っているわけではなく――――――一本の弓矢が忍人と、もみ合っている兵士の背に 向けられて。







しまった――――――。







そう思ったときは、遅かった。







「忍人さんっっっ!!」












――――――どっ・・・。
















鈍い音がして、一瞬その場にいた皆は凍った。




「貴様・・・っ退け!!」



力の抜けた目の前の兵士を勢い良く切り結び、慌てて倒れたに駆け寄る。




!! !!」

「忍、ひと・・・さん・・・・・・」


急いで傷口を確認するが、幸い矢は腕に刺さっただけのようだ。蒼穹の瞳を覗けば意識もはっきりしている。
焦る気持ち、冷たく鼓動する心を抑えて、素早く弓を抜き去り、じわりとあふれ出してくる血を止血するために己の衣を裂き、 脇あたりをきつく縛る。
周囲にいた兵たちは自分達の長が殺されたというのに、その光景にただ動けずにいた。それもそのはずで、彼らもあの 戦乱で彼女に何度恩恵を受けたかわからない身なのだ。それなのに「軍の命令」というだけで出陣し、機械的に「敵」を 射殺そうとして―――。

現実味がなかった。
我らの・・・あのお優しい王が、そのような愚行をすることなど。だが彼女が倒れたその瞬間、今までぼんやりとしていた 「現実」が浮き彫りになる。確かに今、目の前で・・・我らのせいで、大切なお方が倒れていらっしゃるのだ―――。





軍に戸惑いが生じた、その時―――。






「何をしているのです。私は『王を連れ戻せ』と命じたのですよ」

「ですが・・・・・・!」

「二言は受け付けません。それともそなた方はこの国をまた戦乱に導きたいとお思いなのですか」

「・・・・・・・・・」



奥から馬に乗って現れたのは―――今、忍人の代わりに軍の統括を担っている狭井君。恐らく第一軍の後から戦況をうかがっていたのだろう。


しじまを湛えるその瞳の奥には、あきらかな怒りが炎をくゆらせている。遠くでも分かるくらいに、はっきりと。




「我ら中つ国は龍神の加護を受け、今の国があるのです。・・・即ち、加護を受けた今なら、もう王がである必要はない」


「・・・・・・」


「王を連れ戻せという命令は覚えていますね? 『王を』・・・連れ戻せとの」



まさか、と兵士がにわかにざわめく。その様子を見ていた忍人はいち早く察し、倒れていたを肩に担ぎあげた。
そして兵がこちらに弓を向けるより早く―――その黒い光を纏った刀身を地面に力の限り振り下ろし―――。



深い闇に眩いばかりの光線が輝き、鼓膜を劈くような轟音が川辺に響く。刀身から伸びた闇に体力を削られ、息をきらす 忍人の目の前には剣圧でできた道が伸びていた。急いでここを渡りきらねば、今は及ぼした圧力でせき止めている川が、 再びこの道を埋めてしまう。

ひとまずを抱きかかえたまま、そのまま走って向こう岸へ渡る。

慌ててその後を兵士達が追ってくるが、間一髪―――・・・せき止められていた大量の水が、円を描き、そのまま頂点で 勢いを失い垂直になだれ込んできたのだ。いくら鎧を着ているからといって人間が自然界の力に勝てるわけもなく。
物凄い水圧に人間の身体は簡単に押しつぶされ、激流に流されていった。

途中足場の悪い泥濘(ぬかるみ)に何度か足を取られそうになったが、なんとか反対側に渡ることのできた二人はひとまず 安堵する。
だがしかし、槍は届かなくとも弓や砲撃はこの川の距離を安々と越えてきてしまうだろう―――『王』としての資格を失った になった今、先ほどまでの追撃とは比べ物にならないくらいの攻撃が迎え撃つのだろう。
欲を言えばもっときちんと治療をしたいところだが、しかし時は一刻をあらそう。幸い傷は腕にあり、そんなに深くも なかったことから、走ることに支障はきたさない。痛みを堪えて、は走った。


硬く、硬く、忍人の手を握って。










そして暫く経ったところで予想したとおり、別働隊が川を越えてきて、再びその場は戦禍となった。先ほどとまでは違った、 無秩序な、決して生きることを許さないといったような執拗な追撃。時には応戦し、時には岩陰に隠れ、茂みで乱れた息を 整え、また脱走する。









早く、早く―――ここではない、誰も自分達を知らない世界へ。



そう何度も心の中で願って、二人は走る。









だが、そう何度か思った時だった。



「・・・は・・・っ・・・は・・・っ。・・・・・・・っ?」



息を切らす二人の周囲を囲んで弓を放ってきていた兵士達が突如ざわめきだしたのだ。これは好機と思って、兵が見て いないうちにそこら辺にあった大きな岩陰に隠れて暫く様子を伺う。
すると、なにやら林の奥で大きな鎧を着た男が弓兵に何かを伝えているようだ。音は聞こえないが、だとしたら口元を 読めばいい。
こみ上げてくる呼吸の反射を出来るだけ抑えて、口元に視線を集中させた。





「忍人さん・・・? あの人たち、何を言っているんですか?」





いくら兵士が向こう側に気を取られているからといってあまり大きな声は立てられない。目を細める忍人を見上げて、 出来るだけ小さな声で問うた。
しかし、彼の、兵士から読み取った言葉は信じられないものだった―――。












「・・・・・・かきゅうである・・・わが軍・・・攻撃をうけ・・・・・・。

 
 よみがえった・・・まがつひのかみ・・に・・・・」










「えっ――――――――」



















が聞き返した、その瞬間だった。











目の前の大地に左から右へ、一気に光線が引かれ―――・・・次の瞬間そこから一気に爆発が起こった。





「・・・ああああっ!」



声にならない声を上げて、は爆風に飛ばされる。それと同時に手を硬く繋いでいた忍人も何十尺か吹き飛ばされ、
そのままの勢いでどさりと地面に叩きつけられた。




「くっ・・・・・・痛っ・・・。、・・・大丈夫かっ」



あまりの衝撃に最初蹲っていただが、のろのろと立ち上がり呆然と頷く姿を目に留めて安心する。だが、どこかその 視線は心此処にあらずといった感じで―――一体どうしたのか、と思っての見ている方向に自らの視線を向けると、
そこには。




「・・・・・・!!」


「なっ、なんで・・・!? 私、倒したはずじゃ――――――・・・」





瞬時にして炎に包まれた山を背景にして鋼鉄のような鱗に、漆黒の色彩を纏い、目はまるで輝く血色の――――――

禍津日神・・・黒龍が、天高く上っていたのだ。











脳が、最早考える前に警鐘を掻き鳴らす。















っ、逃げるぞ!」



「はっ、はいっ!!」






































黒龍は、復活を果たした。


















愚かな人間の血が滴る音を聞きつけて。
















走る、走る。



風のように、転げるように。



足がどんなに疲れようが、肺がいくらはちきれそうになろうが。



そうでもしないと、奪われてしまうから。










怨嗟と叫び声が、炎上する道にこだまする。


先ほどまで自分達を追っていた兵士たちも、村人も、皆、皆、



あの黒い咆哮の元に焼き殺されていく。








逃げる視線の前には人間が爆風に木っ端微塵に引き裂かれたモノ。




周囲には血の煙、爆薬と錆びた血の香り。





むせ返るような熱さと、それに反して冷えてゆく体温。














ああ。






王だ、国だ、地位だと・・・・・・そんな下らないことに拘っていたから、天罰が下ったのだ。








『誰も自分達を知らない世界へ逃げたい』







二人が叶えたかった願い。




もうすぐ人間はこの大地から消え去る。




もうすぐ『本当に』叶ってしまう。






本当に、これで良いのか?





わがままに走らず、己の理性に縛られた先にあったものは、略奪と戦乱の伝承。







だが、





わがままに走っても、その先にあるものは一体?















――――――ああ、本当の『恐怖』だ・・・・・・。























願わずの零れた世界の視界の端。









―――彼女が映った。








しっかりと繋いでいた手が離れ、彼女の軽い体が――――――・・・









宙を舞った。
















血色に染まった青い花冠。






悲しみとどうしようもない怒りに立ち止まりたいのを抑えて、必死に治療を試みる。




だが、動脈を何度きつく縛っても、血は次から次へと噴出し、肉は剥け、骨は天を向く。




ありえない方向に身体が拉げる、悲惨な光景に脳を停止させてしまいたい衝動に駆られるが






痛みに口元を歪ませて、君はそれでも笑って言うのだ。















「にげて」



















ああ――――――・・・









土と同化しゆく君を乗せて、今すぐにでもここで果てたい。










この脆弱な、何も護ることが出来ない刃こぼれだらけの刃で、この喉を掻ききり、今すぐにでも果てたい。




























だが、









だが・・・まだだ。





まだ、この虚空の恨みを、果たさぬ限りは。








何度目かの轟音がからっぽな空に盛大に響き渡り、それをやり過ごして彼女の墓場をあとにする。








そして再び走る、何度も死体に毛躓きそうになりながらも。









行かなければならないから。








離してしまったあの冷たい手に、暖かな体温を届けるために。







――――――時空の狭間へ。



































輝血の瞳が己を貫く。



ぎょろりとしたその瞳は、一直線に対峙する忍人を睨みつけていた。





死体の壁が出来、破魂刀も真っ二つに折れてしまった。





もう逃げる場所も、隠れる場所もない。








大蛇の口ががぱっと開き、喉奥からは煉獄の炎が渦舞いて噴出する。








最期の瞬間、





忍人は腹に響く黒龍の咆哮をその鼓膜に焼き付けながら、ひとりごとをこぼした。































   










   「、・・・次の伝承でこそ――――――・・ともに・・・・・・」




















































   と  も  に



 
       散  ろ  う  。




















































程なくして、豊葦原は炎の海へと変わった。




暗黒の空が、まるで昼と見まごうばかりの炎の灯火で染まった。




断末魔も怨嗟も、泣き叫ぶ声も。














もう、聞こえない。
















その中で、一際大きく響く『しゃん』と鳴る鈴の音――――――伽藍堂の天空へと向けて、


角を生やした一匹の白麒麟が銀色の尾を引いて駆けてゆく。















その音は寂しく冴え渡り、あの炎の下に眠る二人に問いかけているかのようだった。














まるで、






















   「 散るために、時をつなぐのか 」

























と言うように―――――――――――――――――――。





























**********************************************



はい。というわけでですね、ようやく5000HITキリリクのお話が完成致しました〜。
長かったので前編、後編とわけました。
本格的なバッドエンディングなかんじですが、いかがだったでしょうか。いえ、どなたも「よかった!」 と仰るかたはいらっしゃいませんよね(笑)ええ、だってバッドエンドですものしく〜ん。

でも信じていただけないかもしれませんが、これ、本当はハッピーエンドへの布石といっては布石 なんですよ。これが連載本編に間違いなく深く絡んできますので、本編がハッピーエンドならこれも ハッピーエンドではないか、と思うんです、苦し紛れですがね。


色々、言いたいことはあります。と忍人の苦悩とか、人間の愚かさ、リアリティの無さの恐ろしさ とかなんとか・・・。しかし、もうあえてあまり言う必要もないのでは、と思います。それぞれの読者様 が、それぞれなにかしら感じ取ってくだされば、もうそれがこの文章のいいたいことになるような気が していますので。


でも・・・一応、私の言いたかったことを書いておきますと・・・。

忍人ってもう本当に軍人の鑑のような人だと思うんですよね。だからこそ、こうやって彼をこの国に反発 させるエピソードが難しかった。なので彼は理性に満ちた軍人だし、なによりも「中つ国」を護りたいから こそ逃亡する、といった内容にしてみました。そこらへんは狭井君とちょっと衝突してしまうところなの ですが。
彼女は本当に、私の中ではまさしく「食えない女」として置いているので―――王が中つ国に恵をもたらす ものであれば、もう一回恩恵を受けていれば王など誰でも良いと思っていそうなんですよね。結構冷酷な キャラだと思っています。いえ、忍人とは違った意味で「厳しくも優しい人」なのでしょうが・・・。
ただ、今回のように身分を考えると間違いなくは敵国と結ばれるのが筋でして(政治的な意味で) それに比べてみれば豪族などあまり価値がないわけです。残念ながら。

そこらへんを一番良く知っている(特に忍人に「王になれ」と、そういう厳しい教訓を受けてきて いるんで)と忍人だからこそ、葛藤があったのだと思います。

ただ、己の理性に縛られすぎてもは死に、世界は滅び、また螺旋を巡ることになるし、今回のように 本能(わがまま)に生きたとしても世界は滅びるわけです。そしてこんな伝承になってしまった原因は あの風早でも分からないので、もう一体どうやったら螺旋を繰り返すことなく人々は死ねるのか・・・ こここそがハッピーエンドへの課題になってくると思います。

私は基本的に輪廻転生は好きですが、遙か4をプレイしてみて、ただ連綿と繰り返す(歴史が螺旋する) のもそれはそれで怖いものだと思いました。(まぁ、本来輪廻転生自体一切皆苦の螺旋なのであまり いいものとしてはウパニシャッド哲学では位置づけられていませんけど・・・)

なんだかバッドエンディングな気もしますが、人々が死ぬにはどうすればいいのか・・・それがやはり 遙か4の世界の、幸せへの命題だと思うんですよね。う〜ん。なんだかハピエンスキーとしては寂しい ようななんなのかですが・・・。


ですが、最後の麒麟の問いかけが、この命題に対する私なりの疑問と答えなんです。この「答え」の ほうは本編ラストに分かると思うのですが・・・。


とにかく、番外編書くと俄然やる気が出てくる単純な私です。ものっそい今連載本編書きたいです。
がんばります。




それでは、私のしょーもないイラスト(「逃避行中。」)からキリリクをしてくださいました千穂様、 本当に有難うございました!もしよろしければ、千穂様のみですが、お持ち帰り下さいませ^^


では、失礼致します!






2:47 2009/01/28   琴